Chapter 2

カノン進行のコード

バロック時代中期のドイツの作曲家、 ヨハン・パッヘルベル(Johann Pachelbel 1653-1706)の代表作品『カノン』は、 「D-A-Bm-F#m-G-D-G-A」のコード進行で書かれた輪唱形式の曲で、 クラシック音楽入門用CD、卒業式や結婚披露宴のBGMなどで広く親しまれている名曲です。

今回は、この一般的に『カノン進行』と呼ばれる「I-V-VIm-IIIm-IV-I-IV-V」の和音の流れを使いながら、 原曲の二長調をハ長調に置き換えた「C-G-Am-Em-F-C-F-G」のコード進行の中で、

全セーハによる「F」コードの押弦。
・P指による低音(=ベース音)と伴奏音の弾き分け。
・アコードタイプの和音にタイムラグを付ける練習曲として取り上げてみました。


◆リピート記号
上の楽譜、1段目の最後の小節(=4小節目)の右端にある『太い線、細い線、点2つ』で書かれた小節線は 「リピート記号」「反復記号」「繰り返し記号」と呼ばれるもので、 この楽譜の場合は、また最初に戻って演奏する~という意味になります。

◆分数コード
上の楽譜、3小節の3拍目の「C/E」は、分数コードと呼ばれるもので、
「C=コードネーム(和音)/E=ベース音(単音)」を表しています。
通常の「C」コードは「ド・ミ・ソ」の和音を弾き、「C=ドの音」がベース音になるわけですが、 ここであえて基音(=ルート)とは違う音をベース音に指定したいときに使います。 同じ意味として「オンコード」「スラッシュコード」「オーバーコード」とも呼ばれています。

◆補足
全41小節で構成される楽譜は、次の項に載せてあります。 ここでは、この楽譜を8小節ごとに分け、練習番号「A」~「E」の、 それぞれのポイントを解説していくことにします。

◆練習番号「A」
1小節の中にある「低音から順に高くなっていく4つの音」は『和音』として考えるので、 P指で弾く1拍目の低音以外は、隣の弦に触れないようにします。 この「A」の部分の音形は、全ての音符を音化するだけなら、 全ての小節を1小節目の「Pima」の運指を用いて弾いても良いのですが、 今回は『P指による低音と伴奏音の弾き分け』をテーマにしていますので、
・⑥⑤④弦=「P指」
・③弦=「i指」
・②弦=「m指」
・①弦=「a指」という具合に担当させてみます。


1拍目の「低音=P指」は、低音弦のメロディを弾く時と同様に、 弦を表面板方向に押し込んでシッカリと負荷を与えますが、 2拍目の「伴奏音=P指」は、爪の先端で弦を捉えたら、 プラガール(=連続弾弦)の際に覚えた、 隣の弦方向に向けてP指の各関節を適度に固定させる程度の負荷にとどめておき、 離弦ポイント(=指先が弦から離れる瞬間)に意識を集中しながら弾いてみましょう。

◆練習番号「B」
ここからの各小節の1拍目は「P指+a指」で弾く重音になっていますので、 多少、タイムラグをかけて弾いて構いません。 この「B」の部分の2拍目&3拍目の伴奏音は、前項の練習番号「A」と同様の運指を採用しています。


2段目の「F」は「ファドラ」の3音のみで②弦の「ド」は押弦しませんから、 「1=ひとさし指」はセーハの型を保ちつつ、 指先で⑥弦「ファ」を押さえることに意識を集中させましょう。

◆練習番号「C」「D」
・1段目2小節、3段目10小節
3拍&4拍目の「ミ→レ」のように、音階が①弦~②弦へ移動する場合は、 この部分の運指が「mi」の順になるように工夫してみると良いでしょう。 (試しに、この部分の運指を逆(=im)にしてみると、その弾きにくさが理解できるかと思います)

・2段目6小節、4段目14小節
この部分は分数コードの「C/E」からノーマルコードの「C」に変化しています。

・2段目7小節、4段目15小節
「F」コードの低音が、⑥弦の「ファ」から④弦の「ファ」へと変化しています。 また、この部分の重音は、低音弦と高音弦の距離が接近しているため「ド=m指」と指定していますが、 余裕のある人は「ド=a指」にしても構いません。


・2段目の5小節~6小節、4段目の13小節~14小節
この部分のP指で弾く裏拍(=2拍目&3拍目)の伴奏音は④弦に統一されているので、 P指の練習に最適な音形になっています。

・最後の16小節
ここで初めて8分音符が登場しますが、今回は指を速く動かすことがテーマではないので、 焦りすぎは禁物です。 この音階の中には、③弦~②弦、②弦~①弦へと、 弦を移動する2ヵ所の運指に気を配りながら注意深く練習を積み重ねていきましょう。


◆練習番号「E」
・各小節の1拍目の2分音符
以前、練習した「波線記号のアルペジオ」から、 『Pimaによるタイムラグ・アルペジオ』の復習になります。 「P指」で弾く低音を充分に鳴らした後、そのベース音の上に「ima指」による和音を響かせます。

・Pi指で弾く3拍目の2分音符
衰退していく1拍目の響きを注意深く確認しながら、 1拍目の『2分音符』が『全音符』に聴こえるように薄く響かせてみましょう。

◆カノン進行とJ-POP
このカノン進行は、クラシックのみならずポピュラー音楽の世界においても王道のコード進行と認識されているようです。 日本国内(J-POP)のヒット曲から、その一部を列挙してみると~
愛を込めて花束を(Superfly)、終わりなき旅(Mr.Chirdren)、 クリスマスイブ(山下達郎)、恋するフォーチュンクッキー(AKB48)、壊れかけのRadio(徳永英明)、 さくら(森山直太朗)、桜坂(福山雅治)、さくらんぼ(大塚愛)、 真夏の果実(サザンオールスターズ)、シングルベッド(シャ乱Q)、 出逢ったころのように(Every Little Thing)、負けないで(ZARD)、 守ってあげたい(松任谷由実)、Buttefly(木村カエラ)、ハナミズキ(一青窈)~etc...


カノン in C

◆ポイント
・全セーハによる「F」コードの押弦。
・P指による低音(=ベース音)と伴奏音の弾き分け。
・アコードタイプの和音にタイムラグを付ける