Chapter 1

大きな古時計 / 独奏編

前回の「ジュピター」と同じように、小指のみを使う「G」のパターンに慣れることがテーマです。 曲は1876年に発表されたアメリカのポピュラーソング「大きな古時計」で、 作曲者のヘンリー・クレイ・ワークがイギリス訪問中、 宿泊先のホテルの主人から聞いたエピソードをもとにして歌にしたものだそうです。 まずはメロディの部分から練習を始めてみましょう。


◆跳弦
まず最初の「ソ」「ド」の音形は「3」「4」ではなく、「3」「3」となっています。
この様な「異弦同フレットの音形」があるケースの、これまでの流れとしては~

・「オーラリー」では、P指のタッチに慣れることをテーマにしていたことから、 ⑥弦「ソ」と⑤弦「ド」の2ヵ所、同時に押さえるセット押弦を使いました。
・「久しき昔」では、離れた弦へ飛び移る動き=『跳弦』を練習。
⑤弦~③弦、⑥弦~④弦と、隣り合わない離れた弦を「P指」で弾弦、 また同時に左手の「3=薬指」のみを使って、⑥弦「ソ」④弦「ファ」を押弦しました。

この「大きな古時計」のメロディ冒頭の音形は、「オーラリー」と同じ⑥弦「ソ」から⑤弦「ド」となっていますが、 今回はセット押弦ではなく、「久しき昔」の応用編として「3=薬指」で跳弦するパターンを使います。


1. 使用するコードは「C F G G7 Am」の5種類。
2. 和音は「ima」を同時に弾くアコードのパターン。
3. 9小節、11小節目の「C」は、③弦をP指で、②①弦を「im指」で弾きます。
4. 8小節、12小節、13小節目にスタッカートとテヌート記号があります。
5. この曲の「F」は、メロディの「⑤弦のラ」までセーハしないように注意。
6. 最後の小節、「C」の3拍目の和音にはフェルマータが付いています。

◆スタッカート
8小節目の2拍目、「C」コードの和音の上にある「・」記号。
音の長さを 1/2 程度、短く切って演奏することを示します。

◆テヌート
8小節目の3拍目、「C」コードの和音の上にある「-」記号。
音を充分に保って演奏することを示します。


◆スタッカートの弾き方
音を出した後、押弦している左指を軽く弦から離しつつ、 右指の先端部を、振動している弦に再接触させて音を止めてみましょう。

この時、「音を切る」ということを気にしすぎて、 スタッカートが「アクセント=強調音」にならないようにします。 この種の音のニュアンスについて、この「ビギナーズガイド」のコーナーで述べるのは、 少々、場違いなような気もしますが、この「大きな古時計」の場合、 間違えて飼い猫の尻尾を踏んでしまった際の「フギャ!」という猫の泣き声のようなニュアンスとは明らかに違います。

どちらかと言えば、叙情的な雰囲気のあるメロディの伴奏音に、いわゆる音楽の「味付けの一つ」として、 スタッカートが調味料の役目をはたしている~と、そんなイメージで弾いてみましょう。