Chapter 1

調弦

ギターの弦を正しい音に設定していく作業を「調弦=チューニング」といいます。
フレットを押さえない開放弦の音程は、以下の通りになっています。

⑥弦=「ミ・E」
⑤弦=「ラ・A」
④弦=「レ・D」
③弦=「ソ・G」
②弦=「シ・B」
①弦=「ミ・E」


弦の音程は、ヘッドにあるペグ(糸巻)によって調整します。
ペグは、ネックの裏側(指板の無いほう)から見て、 右回転(=時計回り)させると、弦の張力が弱まり音は低くなります。 左回転(=反時計回り)させると、弦の張力が強くなって音は高くなります。


クラシックギターの場合、この回転方向は全ての弦において共通ですが、 アコースティックギターやエレキギターのペグは、 高音弦と低音弦で回転方向が異なる場合があるので注意が必要です。

◆基準になるA音を合わせる
市販されている全音程の音叉から、A=440ヘルツのものを用意します。
ヘルツ(Hz)は周波数の単位で、1秒間に440回振動することを意味します。 音叉のUの字型になっている先端部分を、膝などの任意の場所で叩いて振動させ、 音叉の付け根にある球状部分をブリッジの駒の部分に軽く押し当てると、 楽器が共振してA音が鳴ります。


あとは、この音叉の音と⑤弦の「ラ=A」の音を合わせます。
しかし、実際のギターの⑤弦の音は音叉の音より2オクターブ低く、 慣れないうちは聞き取りにくいので、音叉と同じ音の出るハーモニクス(=4倍音)を使うと効果的でしょう。

◆ハーモニクスの鳴らし方
・⑤弦、全弦長の4分の1の長さにあたる「5フレット」上に、
・左手の「1=ひとさし指」を軽く触れ、右手で⑤弦を発音させます。
・音が出た直後、触れていた左指を弦から離します。


これで⑤弦の開放弦より2オクターブ高い音を鳴らすことが可能になりました。
しかし、ハーモニクス音を鳴らした後、音叉を振動させてブリッジに当てた頃には肝心のハーモニクス音が衰退してしまい、 2つの音を聞き比べることが不可能になっているケースが考えられます。
この問題を回避するために『左指のみでハーモニクスを鳴らす方法』を覚えると便利です。

◆左指のみのハーモニクス
・⑤弦の7フレット付近を、左手「3=薬指」で押弦します。
・押弦している薬指を④弦方向へ引っ張るように移動させ、
・ある程度、パワーを加えたところで薬指を離します。(写真:左)
・左手の薬指のみで充分に⑤弦の音を鳴らすことができたら、
・左手「1=ひとさし指」を、5フレット上に軽く触れながら薬指で⑤弦を弾きます。(写真:右)


この様に、右手で音叉、左手でハーモニクスを分担できるようになれば、 容易に2つの音を聞き比べることが可能になるでしょう。

◆ユニゾン調弦
基準となる「⑤弦のA音=ラ」を合わせた後は各弦の調弦に入ります。
③弦の「シ」の音を押さえる時のみ、4フレットです。

⑥弦5フレット=⑤弦開放弦
⑤弦5フレット=④弦開放弦
④弦5フレット=③弦開放弦
③弦4フレット=②弦開放弦
②弦5フレット=①弦開放弦
この様に、隣接した弦の同じ高さの音(=ユニゾン)で合わせる方法を「ユニゾン調弦」と呼びます。


ハーモニクス調弦

「ユニゾン調弦」は、ギターを始めたばかりの初心者向きの調弦ですが、 基準にする弦が次々と移行していくため、微妙な誤差が蓄積され、 最終的に大きな誤差となってしまうことも考えられます。
そこで、ある程度、ユニゾン調弦に慣れたら、ハーモニクス調弦で合わせた後、 オクターブ調弦で微調整する~という方法を覚えると良いでしょう。

音叉の音と「⑤弦のA音=ラ」を合わせます。
⑥弦5フレットのハーモニクス=⑤弦7フレットのハーモニクス
⑤弦5フレットのハーモニクス=④弦7フレットのハーモニクス
④弦5フレットのハーモニクス=③弦7フレットのハーモニクス
⑥弦7フレットのハーモニクス=②弦開放弦
⑤弦7フレットのハーモニクス=①弦開放弦

◆オクターブ調弦
ハーモニクス調弦を終えた後の確認作業として行います。


⑤弦開放弦「ラ」=③弦2フレット「ラ」
⑤弦2フレット「シ」=②弦開放弦「シ」
②弦3フレット「レ」=④弦開放弦「レ」
④弦2フレット「ミ」=①弦開放弦「ミ」
①弦開放弦「ミ」=⑥弦開放弦「ミ」

他には、開放弦の響きで合わせる調弦や、演奏する曲の調に合わせた調弦、 ⑤弦を「ソ」⑥弦を「レ」にするという変則調弦などもありますが、 まず最初は「ユニゾン調弦」や「ハーモニクス調弦」を覚えながら、 じっくりと『音を聴く』ことに慣れていくと良いでしょう。

◆「うねり」で合わせる
2つの音を聴き比べている時、例えば「これはまだ低いな」と、明らかに音の高低が判別できるうちは良いのですが、 音の高低が接近してくるにつれ判断が難しくなり、そのままペグを回し続けていると、 ふと気付いた時には「高くなってしまった~」ということがあります。

この問題は、音の高低ではなく「うねり」を聴くことで解決できます。

「うねり」とは、周波数がわずかに異なる2つの波が干渉した時に起きる現象で、 音程が離れている段階は「ウワン、ウワン、ウワン」と小刻みに揺れていますが、 接近するにつれ「ウワ~ン、ウワ~ン」と、しだいに波の間隔が開いていき、 「うねり」が無くなると音が合ったことになります。