Chapter 2

弦の交換

クラシックギターの弦は6本で構成されており、①弦~③弦の高音弦は半透明のナイロンで、 また、⑤弦~⑥弦の低音弦は、極細のナイロンの束を芯に、その周囲に細い金属が巻き付けられています。 化学繊維が開発される前は「羊の腸=ガット」で作られたガット弦が用いられていましたが、 しだいに耐久性の高いナイロン弦が主流になり、近年では、更にコストパフォーマンスを追求したカーボンファイバー弦も開発されています。

◆取り付け順
・弦は、まず最初にブリッジに、続いてヘッドのペグ(=糸巻き)に取り付けます。
・また、高音弦は①弦~③弦、低音弦は⑥弦~④弦という具合に、
弦を通すペグの穴が、ナットに近い位置にある弦から取り付けると良いでしょう。
この順番を間違え、例えば、③弦②弦を交換した後に①弦を取り付けようとすると、 取り付けてある③弦と②弦が邪魔になって作業が難しくなるので注意しましょう。

◆ブリッジ部分
弦をブリッジの穴に通したら、取り付けに必要な部分(約4~5cm)を目安にヘッド方向に折り曲げ、 穴に通した弦に対して右から左に交差させ、ヘッド方向に折り曲げた部分に2回通します。


この時、下の写真(=左)のように、交差させた末端部分が、 駒の角から表面板方向に位置していることを確認します。


この末端部分が、上の写真(=右)のように駒の角から上部に設定されていると、 弦を巻き上げていくと同時に脱却してしまう恐れがありますので注意しましょう。

◆ペグ(=糸巻き)部分
ブリッジ部の弦がシッカリと固定されているのを確認したら、 ペグの穴に弦を通し、ネック方向に折り返し、折り返した弦の下に弦を通して交差させます。


交差させる回数は、低音弦の場合は1回で充分ですが、 高音弦、特に①弦と②弦の場合は2回交差させておくと完璧です。 このペグ部分の作業をおこなっている最中に、 先程、取り付けたブリッジ部の弦がゆるんでしまわないように注意しましょう。

◆余分な部分の処理
下の写真(=②弦)のように、ブリッジの角から伸びた弦が表面板に接触していると、 表面板が振動すると同時に雑音が生じる恐れがあります。


弦の取り付け作業を終えたら、この様な雑音の生じる原因になりやすい余分な部分は、 このブリッジ部だけでなく、ヘッド部の方も確実に切り落としておきましょう。


弦の切断には、専用の「ストリングカッター」「ストリングニッパー」があると便利ですが、 高硬度の爪切りで代用しても良いでしょう。 ただし、硬度の弱い爪切りは、刃こぼれをおこすこともありますので注意が必要です。



◆ヘッド部の注意点
糸巻に弦を取り付けた後は、ギアを回して弦を巻き上げていくわけですが、 この時、弦を巻き付けていく回転部の「左右、どちらの方向に巻き付けていくか?」という点もポイントになります。


弦とナット部分には少なからず摩擦が生じていますが、上の写真のような取り付け方だと、 弦を巻けば巻くほど弦の角度が上昇していくので、ギアの微妙な動きに反応することが不可能になり、 調弦しにくい状態になってしまいます。なるべく下の写真のように、 ナットからペグ方向に伸びる弦が直線に近づくようにセッティングしましょう。


ただし弦を通す穴は、それぞれのメーカーによって微妙に位置が異なっていますので、 上の写真は、あくまでも参考例として覚えておき、 左右、どちらに巻き付けていくべきかは、 事前に自分のギターで確認しておくと良いでしょう。

◆弦を安定させる方法
ブリッジ部とヘッド部の弦の取り付けが完了した当初は、当然、弦は正しい音程に設定されていませんので、 このままの状態で演奏することは不可能です。そこで、正しい音程まで糸巻部のギアを回して弦を巻き上げていくわけですが、 この時、ただ単純にギアを回して正しい音程を作っても、 すぐに弦が伸び、長期にわたって音程が狂う~という状態が続いてしまいます。 この様な状況を回避するには、以下のような方法を用いると効果的でしょう。


1. まず、弦の両端がシッカリと固定されていることを確認したら、
2. 弦が安定した際の張力と同程度の負荷を与え、
3. この状態を、数秒間持続させた後、
4. 右手で弦をささえながら、左手でギアを回して弦を巻き上げていきます。(写真 左)
5. だんだんと強くなる張力を感じながら、最初に加えた負荷を維持した状態で、
6. 最終的に、右手を弦から離します。(写真 右)

つまり、正しい音程で調整されている弦の張力と、ほぼ同程度の力を、 弦を巻き上げる当初の段階から加え、そのまま弦を巻き込んでいく~という方法です。 この時、あまりにも必要以上の負荷を与えると、弦の太さが部分的に変化して不良弦になってしまったり、 最悪、弦が切れてしまう場合もありえますから注意しましょう。

勿論、初めて弦を交換する際など、初心者の皆さんには「どの程度、負荷を与えれば良いか?」は分からないでしょうから、 事前に正しい音程に設定されている弦に触れておくなどして、張力の度合いを覚えておくと良いでしょう。 この作業に慣れれば、弦を張り替えた直後でも調弦に悩む時間を減らすことができますし、 およそ3日後には完全に安定した状態で練習することができるでしょう。