Chapter 2

波線記号のアルペジオ

『縦向きの波線記号』で書かれた和音には、 前項で解説した「P指」のみで弾くプラガール奏法の他に、 以下の楽譜のように、「Pima」=4本の指を使ったパターンがあります。


「A」-- 高音弦の和音=3つの音を、ima指で弾くタイプ。
「B」-- 低音+高音弦の和音=4つの音を、Pimaで弾くタイプ。
「C」-- ⑥弦から①弦の和音=6つの音を、PPPimaで弾くタイプ。

上記3種のうち「C」タイプは、プラガールの時と同じ音形になりますが、 中級者以上の複雑な音形を持つレパートリーを演奏する際に、 この様な運指を用いる場合がある~とだけ覚えておき、
まずは、「A」と「B」のパターンからマスターしていきましょう。


imaによるタイムラグ・アルペジオ

・③②①弦の和音にタイムラグをつけたパターンを練習します。
・今回は右指がテーマなので、左指はセーハの無い「Am Dm E7」を用いています。
・慣れないうちは、開放弦のみで練習してみるのも良いでしょう。
・完成形は、以下のような楽譜になります。


◆第1段階 練習番号「A」
和音の基本型=アコードのパターンを使って、高音弦に「ima」3本の指を同時にセット、 加えたパワーに対して反発してくる弦の張力に耐えながら、 弦が爪の先端を滑って離弦する~この行程を再確認しておきます。

◆第2段階 練習番号「B」
側面板に乗せている右肘を軽く浮かし、 肩、肘、手首の関節が動かせる状態にあることを確認できたら、 高音弦に「ima」3本の指を同時にセット、手首の関節を、やや内側に曲げながら、 腕全体を表面板とは逆方向に浮かして、指先がimaの順に弦から離れていくようにしていきます。 この時、指先を能動的に屈曲させないように、 また、指先を弦にセットさせずに、空中から弦を叩くような動作にならないように注意しましょう。


◆第3段階 練習番号「B」
軽く浮かせていた右肘を側面板に乗せ、高音弦に「ima」3本の指を同時にセット、 手首のスナップを効かせながら、腕全体を使ってimaを離弦させるように心がけます。 この時、手首の動きと共に右肘が側面板から離れたり、離弦後にima指が内側に曲がるのは構いません。(写真:下)


◆第4段階 練習番号「C」
手首の使い方に慣れたところで、弦に加えるパワーを維持させながら、 肩、肘、手首の関節の動きを、だんだん小さくしていきます。 練習開始当初は、腕全体の使い方や接弦から離弦に意識を集中させてきましたが、 ある程度、慣れてきたら、ima指の離弦後、次の弾弦への準備動作を意識してみましょう。


Pimaによるタイムラグ・アルペジオ

・「低音+高音弦の和音」にタイムラグをつけた練習です。
・慣れないうちは、開放弦のみで練習してみるのも良いでしょう。
・完成形は、以下のような楽譜になります。


今回は「P指」の弾弦直後に「ima指」で弾弦することが求められるため、 少々、難易度が高く、練習開始当初は難しく感じてしまうかもしれません。 まずは、前項の「ima指のみのパターン」の熟練度と共に、 「P指」から「ima指」に移行する際の、手首の素早い切り返しがポイントになります。

◆練習の手順
練習番号「A」の部分に求められる技術は、 前項の「imaによるタイムラグ・アルペジオ」のケースと同じです。 この「A」の弾き方を保ちながら、1拍目の4分休符を少しずつ短くしていきます。
練習の進め方は、以前「オルフェの舞い高音+低音練習」の際に用いた手順と似ています。


練習番号「B」では、冒頭の休符が8分休符に変化し、
練習番号「C」からは、更に休符が短くなり、練習番号「D」では、ついに休符が無くなります。


◆練習番号「D」のポイント
・P指を使って低音弦を表面板方向に押し込み、充分にパワーを加えた後、
・指先を滑らせ、次の弦に寄りかかるようにして離弦、
・直後、手首を切り返し、スナップを効かせながら、
・高音弦の和音にタイムラグをつけ、imaの順に離弦~させます。


今回の「低音+高音弦の和音」にタイムラグをつける弾き方は、 将来的には「P→i→m→a」各音の間隔を意図的に広げたり狭めたりしながら、 その曲の持つテンポ感を演出していくことになります。